2016年1月4日月曜日

2015年読書総括

2015年に読んだ本リストと感想をまとめる。

1月>
6日『ペンギン・ハイウェイ』森見登美彦
18日『すべて真夜中の恋人たち』川上未映子
31日『もう消費すら快楽じゃない彼女へ』田口ランディ ☆

2月>
3日『TUGUMI』吉本ばなな
18日『風に舞いあがるビニールシート』森絵都
28日『美しいアナベル・リイ』大江健三郎

3月>
3日『想像ラジオ』いとうせいこう

4月>
2日『午後の曳航』三島由紀夫
6日『天国旅行』三浦しをん
15日『落下する夕方』江國香織
21日『まほろ駅前多田便利軒』三浦しをん

5月>
8日『女子をこじらせて』雨宮まみ ☆
23日『僕のなかの壊れていない部分』白石一文

6月>
1日『私の男』桜庭一樹
7日『グランド・フィナーレ』阿部和重
10日『ニキの屈辱』山崎ナオコーラ
16日『東京DOLL』石田衣良
23日『きいろいゾウ』西加奈子
29日『ニシノユキヒコの恋と冒険』川上弘美

7月>
7日『ほかならぬ人へ』白石一文
21日『塗仏の宴 宴の支度』京極夏彦
31日『塗仏の宴 宴の始末』京極夏彦

8月>
8日『有頂天家族』森見登美彦
11日『六番目の小夜子』恩田陸
18日『ロミオとロミオは永遠に 上』恩田陸
19日『ロミオとロミオは永遠に 下』恩田陸

9月>
18日『プラネタリウムのふたご』いしいしんじ
24日『愛に乱暴』吉田修一
26日『ラッフルズホテル』村上龍
29日『彼女は存在しない』浦賀和宏
30日『ユリイカ 9月号』 ☆

10月>
4日『ぼくの人生案内』田村隆一 ☆
11日『いなくなれ、群青』河野裕
17日『ホテルローヤル』桜木紫乃
20日『ユリコゴロ』沼田まほかる
26日『蝶々の纏足・風葬の教室』山田詠美
31日『アムリタ 上』吉本ばなな

11月>
5日『アムリタ 下』吉本ばなな
10日『九月が永遠に続けば』沼田まほかる
22日『アンテナ』田口ランディ
28日『葉桜の季節に君を想うということ』歌野晶午
30日『仕事文脈 vol.7』 ☆

12月>
2日 『森見登美彦の京都ぐるぐる案内』森見登美彦 ☆
11日 『美人画報ハイパー』安野モヨコ ☆
12日 『悼む人 上』天童荒太
20日 『悼む人 下』天童荒太
30日 『そして生活はつづく』星野源 ☆
31日 『お酒とつまみと友達と』こぐれひでこ ☆

48冊。

[傾向]
 今年はエッセイや雑誌など、小説以外のものを意識的に読むようにした。(☆のついているもの。計9冊)。食わず嫌いで、今まで小説以外の読み物はまったくと言っていいほど読んでこなかったのだが、もっと幅広い文章に触れる必要があると感じ今年は機会があれば読むようにした。
 結果、これはこれで読みやすいし、面白いなと思った。小説はどんなにうまく書いても辻褄合わせや盛り上がりなど演出される。始まりと終わりも絶対に必要になる。それこそが小説で、それはそれでいいのだけど、それに慣れた上でエッセイなんかを読むとその自由さに目が覚まされる。
小説というのは世界を一から作って、こういう世界ですよと全体像を示した上でそれをうまいこと丸く完結させなければいけない。でもエッセイは切り取った一部だけでいい。昨日まで生きてきて、本が出た後も生きている人の書くものだから、全体像を見せることなんてそもそもできないし、見せる必要もない。それでいて、書かれていない部分や、これから先の未来がまだまだ続いていくことを感じることができる。大げさだけど、その見えない部分の広がりみたいなものが自由で、向こう側に書き手の存在を感じることができて、こういう文章もいいなあと思った。

[作家・作品]
全体としては今年も趣味に偏ったエントリーだけど、作品としては「有名だけど読んでなかった本」を読むようにしていた。例えば芥川賞の『グランド・フィナーレ』(前読んでたのを忘れて買ってしまった)、直木賞の『私の男』『TUGUMI』『風に舞いあがるビニールシート』『ホテルローヤル』『ほかならぬ人へ』、じわじわと話題になった『想像ラジオ』、名作と名高い『悼む人』。ミーハーっぽいが、有名どころを押さえずして大口は叩けないと思い、ブックオフで100円と見るやせっせと買って読んだ。
作家の開拓もするようにして、今年は西加奈子、白石一文、沼田まほかるに初めて手を出した。
白石一文の『僕のなかの壊れていない部分』、沼田まほかるの『ユリコゴコロ』はかなりよかった。白石一文は村上春樹に毒と棘を混ぜ込んだような感じ。『ユリゴコロ』は純愛ホラーという新しさがあって面白かった。いい作家を見つけた、と思ったのだけど、勢いに乗って読んだ白石の『ほかならぬ人へ』とまほかるの『九月が永遠に続けば』はぱっとしなくて、二人とも何作も読むにはちょっとくどい印象。
それから、ミステリーが好きなので『彼女は存在しない』『葉桜の季節に君を想うということ』を読んでみたけど、これはどちらも叙述トリックを使った作品だが、見破られないことを重視しすぎて突っ込みどころが多く文章も稚拙で、小説としての出来としてはイマイチだなあ。ここ数年、ミステリーを読んではがっかりしている。トリックと文章のレベルが両立した作品が読みたい。
結局、三浦しをんや森見登美彦、田口ランディ、山田詠美にいしいしんじなど、個人的に高打率の作家が今年も多く登板した。

MVP
 読んでてすごく良かった作品を挙げる。
・エンタメ部門
『まほろ駅前多田便利軒』三浦しをん
 三浦しをんは本当に安定している。安心して読める。「愛すべきキャラクター」という、口で言うはたやすいが生み出すのは難しいものを見事に描き出すことのできる人だ。そしてこの本は特に、作者が楽しんで書いているのが伝わってきて、読んでいるだけで楽しくなる。

『塗仏の宴』京極夏彦
 この作品は特に、京極夏彦の中二病が爆発している。しかも長すぎる。でも面白い!ここまで作りこんでくれれば、あら探ししてイライラすることもなく安心して読み、盛り上がることができる。作り物だとわかっていてもやっぱりわくわくしてしまうディズニーランドのアトラクションと同じだ。趣味に偏っていることは重々承知だが、読んでいる間中「一生中2じゃだめかしら?」という西炯子エッセイが頭から離れなかった(読んでないけど)。

・いまさらそれかよ部門
TUGUMI』吉本ばなな
 本当に今さらかよという感じだけど、つぐみのキャラクターがとてもよかった。彼女のキャラクターのおかげで、日常なのにファンタジーのような盛り上がりと、一方で熱っぽさみたいなものも感じられて読後感がとてもいい作品だった。人が死なないのもよい。

『落下する夕方』江國香織
 江國香織は大概読んでるのだけど、なぜか手を出していなかった。
 人が意識的に「生きる」ことを決意する物語なのだと思う。そういう意味では構造が『ノルウェイの森』に似ている。文章の美しさによってやるせなさと力強さみたいなものが引き立てられている感じがした。

・文句なし部門
『ペンギン・ハイウェイ』森見登美彦
 素晴らしかった。素晴らしかった。書評は以前書いているので割愛するが、一番の良作が年の頭に来てしまった感じ。
 森見登美彦はかなり読んできたけれど、ひねくれた京都の大学生を主人公にしているイメージが強かったので印象が変わった。「僕」がけなげで「お姉さん」が素敵で、一つ一つのエピソードがこんぺいとうのようにかわいくきれいで、ラストの切なさまで含めて隅から隅まで味わってどっぷり浸かりたい物語。

『想像ラジオ』いとうせいこう
 流行っていたから手に取った。311の震災をテーマにしていることも、読み始めるまで知らなかった。

 死んでしまった人について、死後の世界について、我々は想像することしかできない。でも、想像することで救われること、安らかに思えることが確かにある。これは死んでしまった人と、いつか必ず死んでしまう人、すべての人に宛てたメッセージなのだと思う。

[まとめ]
 2015年は年50冊読むことが目標だったが、あと一歩及ばなかったので今年は達成したい。

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